川名壮志、山本将克 *

大手検索サイト「グーグル」の検索で自分の名前を入力すると、無関係の犯罪を連想させる語句が自動的に表示され、名誉を傷つけられたとして、東京都内の男性が米グーグル本社に表示差し止めと慰謝料を求めた訴訟で、東京地裁は15日、差し止め請求を認め慰謝料30万円の支払いを命じた。小林久起裁判長は「違法な投稿が容易に閲覧できる状況を作った」と指摘した。 検索サイトの「サジェスト機能」による名誉毀損を認めた東京地裁判決は、インターネットの特性を踏まえて「放置すれば将来にわたって権利侵害が拡大する」と述べ、原告の男性が受ける不利益の大きさを重視した。同地裁では別の男性もグーグル側に表示差し止めを求めて提訴しており、今回の判決はこれらの訴訟の司法判断に影響を与えるとともに、検索サイトに真摯な対応を迫るものといえる。 サジェスト機能は大手サイトが取り入れる一方、トラブルも絶えない。グーグル相手の同種訴訟は他の国でも起こされ、フランスでは差し止めを認める司法判断が出ているという。原告側の富田寛之弁護士は「検索サイトはサジェスト機能による名誉毀損を放置したままでなく、何らかの対応を取る義務が生じるのではないか。トラブルを阻止する先例となるだろう」と判決の意義を語った。 ネットを巡るトラブルに詳しい甲南大法科大学院の園田寿教授(情報法)は「サジェスト機能では不利益情報も表示され、紙の文書などに比べると権利侵害が果てしなく続く。判決は、デジタル社会で情報の削除を要求できる『忘れられる権利』を認めたと言え、画期的だ」と話した。